チョコガタイシカイメンDiscodermia calyxより単離されたカリクリンAは、タンパク質脱リン酸化酵素(PP)1およびPP2Aに対する顕著な阻害活性に由来する、強力な細胞毒性を示す。一方、同じPP1、PP2Aの強力な阻害剤であるオカダ酸は、クロイソカイメンHalichondria okadai内に大量に蓄積保持されており、近年オカダ酸結合タンパク質OABP1、OABP2がH.okadai自身より単離された。このうちOABP1はH.okadai自身のPP、OABP2はクロイソカイメンのオカダ酸に対する自己耐性に関与していると考えられている。本研究では、H.okadaiと同様にD.calyxがカリクリンAと結合し無毒化するタンパク質を持つことで自己耐性を獲得したとの作業仮説を立て、実験を進め、カリクリンAをリガンドとするアフィニティー担体を合成した。 リテラジンBは伊豆半島産群体ホヤRitterella tokiokaより単離されたステロイド二量体であり、マウス白血病細胞P388に対し強力な細胞毒性を示す。ホヤ体内にリテラジンBと結合してその毒性を抑制する物質が存在するとの作業仮説に基づき、アフィニティークロマトグラフィーによりリテラジンBに特異的に結合するタンパク質の探索を行った。リテラジンBは特異な骨格を持つ稀少天然物で、かつ立体障害等で誘導体合成が困難であった。そこで、アジド酢酸塩化物による修飾およびヒュースゲン付加環化反応を用いることでこれを克服し、リテラジンBのアフィニティープローブを合成した。次にホヤ組織破砕液に対し硫安分画、陰イオン交換クロマトグラフィーを行い、各タンパク質画分の加熱処理前後における細胞毒性の変化を指標にして目的タンパク質の濃縮を行った。そしてこの画分について合成したアフィニティープローブを用いて目的タンパク質の単離を行ったところ、数種のタンパク質バンドをSDS-PAGEにて確認した。
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