がん細胞増殖に関与するMEKやエイズウイルス(HIV)の複製に関与するRev蛋白は、約10残基のアミノ酸配列からなる核外移行シグナル(NES)を有し、核から細胞質へと輸送され、その機能を発現する。これら蛋白の核外移行過程を阻害する分子は新規作用機序の抗がん剤や抗HIV薬の開発に繋がることに着目し、すでに申請者は、薬用植物から両蛋白の核外移行阻害天然物として、peumusolide Aならびにostholを見出している。そこで、本研究では、申請者自らが見出した両蛋白の核外移行阻害天然物の作用機序を明らかにすることを目的として、合成プローブ分子を用いて両活性天然物の標的蛋白の解明を検討している。 本年度は、すでに昨年度合成し強い蛋白核外移行阻害活性を示すことを明らかにした天然物由来のフォトアフィニティープローブ分子による光照射下による蛋白ラベル化実験の検討を行った。しかしながら、光照射の時間、温度、波長など各種条件を検討したが、蛋白ラベル化を行うことはできなかった。そこで、光照射下によるプローブ分子の安定性を検討することとした。その結果、活性天然物由来の基本コア分子とジアジリン-ビオチンユニットの結合の結合が開裂し、プローブ分子の分解が蛋白ラベル化に優先して起こることを明らかにした。 そこで、基本コア分子とジアジリン-ビオチンユニットの間に光安定性と水溶解性を有するエチレングリコールを含むアンカーを導入した数種のプローブ分子の合成を行った。さらに、合成した数種のプローブ分子について、間接蛍光抗体法によりMEKおよびRevの核外移行阻害能を評価し、標的蛋白解明のための十分な活性を示す両天然物由来のプローブ分子を創製することに成功した。
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