N末端に、GST、His、あるいはTrxタグを付加したEcR-LBD(EcRリガンド結合ドメイン)、C末端にHisタグを付加した遺伝子を作成し、C末端にHisタグを付加したUSP-LBDとの共発現系を幾つかの大腸菌株を用いて発現を試みた。培養条件の最適化、各種クロマトグラフィーによる精製法につき検討し、何れのタグ付加体においても目的タンパク質を比較的収率良く、高純度で得ることに成功した。しかし、プロテアーゼ処理によりEcRが切断されることが示唆され、最終精製品の収量は大きく減少した。得られた精製試料につき結晶化を試みたところ、結晶化には至ったものの、再現性に乏しい、回折X線測定に適切な大きさまで成長させることが困難、放射光においても4Å程度の分解能の回折反射しか得られないなどの問題点があった。そこで、プロテアーゼ処理のみならず結晶化にも不都合ではないかとの判断から、EcRをさらにN末端から数十残基切り離して試料とし、その発現系の構築を試みることとした。その結果、Trxタグ付加型について発現に成功したことから、現在、精製法につき検討を行っている。今後、プロテアーゼ処理による切断も無く、本発現系により高収率での高純度品の調製と良質な結晶調製が可能となるものと考えている。
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