研究概要 |
様々なタグを付加した黄色ショウジョウバエ由来脱皮ホルモン受容体(EcR)のリガンド結合ドメイン(EcR-LBD)および協同的に働くUSP蛋白質(USP-LBD)の大腸菌を用いた発現精製に成功し,結晶化条件をも見いだすに至った。しかしながら,十分な量の蛋白質試料の確保が困難である,結晶性が十分ではない(分解能4A程度,データ精度が)不十分といった問題点があった。そこで,EcRリガンド結合ドメインと目されている所からN末側に延びている約90残基のうち70残基および40残基を切り離したEcR-LBDの発現,精製系を構築した。これら試料につき,さまざまに分析および結晶化を試みたところ,脱皮ホルモン結合部位とジンクフィンガーモチーフを含むDNA結合部位の間の94残基のうち、55残基程度がUSPとの結合に何らかの役割を担っていることが明らかとなった。また,その部分に他の昆虫では見られないCys残基が3個見出され,この部分でのS-S結合の形成が複合体形成に不利に働いていることが示唆された。一方,EcR-LBD部分にも実験室系での取り扱いに不利と思われるCysが存在していた。そこで,これらCys残基のSerあるいはAla残基への変異を導入し,その発現,精製系の構築を試みることとした。発現が全てGSTタグ付きで行い,リンカー部分の加水分解はPreCission proteaseを用いて行うこととした。現在,精製法の検討中であり,高純度の複合体が得られ,良質な結晶調製が可能となるものと考えている。
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