研究概要 |
インドネシア産の群体ボヤLissoclinum cf.badiumから単離したLissoclibadins 1~14(Lb1~Lb14)は、抗菌、抗カビ、培養癌細胞の増殖抑制などの活性を示すが、1つの活性のみを示すものから2、3種類の活性を併せもつものまであり、その強度もまちまちである。Lb1, Lb8, Lb14はヒト固形癌細胞の増殖を比較的強く抑制する。この活性はアポトーシスの誘導によるもので、Lb1を用いてそのメカニズムの解明を行っている。これまでの実験で、Lb1で処理したヒト大腸癌細胞HCT-15においてannexin V陽性細胞が時間依存的に増加した。また、Lb1はカスパーゼの活性化を起こすことも分かった。実験に使用する化合物の供給のため、生物採集とLb類の単離精製を行った。 ニシキボヤ由来のN,N-didesmethylgrossularine-1(DDMG-1)の炎症性サイトカイン産生抑制活性をさらに詳しく調べるために、DDMG-1の単離、誘導体の作製、同族体の化学合成を行っている。今の所、誘導体と同族体の合成は難題である。 L. cf. badiumとニシキボヤを採集した際に、類縁体を探索するため、他種類の単体ボヤと群体ボヤを同時に採集し、生物活性試験と化合物の単離、構造決定を行っている。これまでに、未同定の単体ボヤから新規化合物を単離し、その構造を明らかにした。炎症性サイトカイン産生への影響を調べている。また、並行して行っていた研究で得られたソフトコーラルの活性物質が、TNF-αの異常生成を抑制する効果を示したので、そのメカニズムの解明を行っている。
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