ニシキボヤ由来のα-カルボリンアルカロイドDDMG-1のヒト単球系細胞株THP-1細胞における炎症性サイトカイン産生に対する効果を調べた。その結果、DDMG-1はTHP-1細胞においてもマウス白血病細胞株RAW264.7細胞と同様に、リポ多糖の刺激によるIL-8の産生を抑制する効果を示した。培養上清中のIL-8量の定量、ウエスタンブロット、EMSAなどの実験により、DDMG-1はNF-κB活性化を抑制する効果ならびにIL-8のmRNAの発現を抑制する効果を持つことが分かった。IL-8は癌細胞や炎症を起こした細胞から多量に分泌されており、癌の浸潤にも関与していると考えられているので、DDMG-1は癌や炎症の治療薬開発のリード化合物となることが期待される。 インドネシア産のソフトコーラルSarcophyton sp.からTNF-αの産生抑制物質として単離した3種類のジテルペンについて、TNF-α以外の炎症性サイトカイン産生に対する影響をTHP-1細胞を用いて検討した。3種類の化合物のうちlobohedleolideは、IL-8の産生を促進する効果を示した。この化合物はNF-κB活性を阻害するが、IL-8のプロモーター活性を誘起することによりIL-8の産生を増大させることが分かった。その他の2化合物(7Z)-lobohedleolideとdenticulatolideは、IL-8の産生量に影響を示さなかった。 インドネシア産の群体ボヤLeptoclinides dubiusの活性成分の探索を行ったところ、leptoclinidamide、(-)leptoclinidamine Bと命名した2種類の新規化合物が単離された。残念ながら、ヒト固形癌に対する細胞増殖抑制活性はほとんど無かったので、その他の活性を検討している。 沖縄県西表島で採集した海綿Haliclona sp.の抽出物が、ヒト固形癌細胞に対して非常に強い増殖抑制活性を示した。粗抽出物を用いた実験で、癌細胞に対するアポトーシス誘導活性が示唆されたので、活性化合物の単離を行った。その結果、2種類のアルカロイドが粗抽出物の示す活性を再現することが分かった。残念ながら、いずれも既に知られている化合物papuamineとhaliclinadiamineであったが、これらの化合物が癌細胞増殖抑制活性を示すことは新しい発見であった。核の形態変化とフローサイトメトリーの実験より、これらの化合物はアポトーシスを誘導することが分かった。
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