研究概要 |
本研究は、我々が生体から単離・精製することにより多数存在することを明らかにした、タンパク質構造に隠された新しい内因性生理活性ペプチド、「クリプタイド」(Peptide Revolution, 2003, 554, 2004 ; Biopolymers, 88, 190, 2007 ; J.Biol.Chem., 283, 30596, 2008)を系統的、網羅的に同定する方法論を確立し同定するとともに、クリプタイドが関与する生体情報伝達機構を明らかにするため、それらの受容体タンパク質を同定、細胞内情報伝達系を解析し、クリプタイドの生理的存在意義を明らかにすることを目的としている。本年度はブタ心臓より好中球に分化したHL-60細胞からのβ-ヘキソサミニダーゼ分泌を指標にして、新しい好中球活性化ペプチド、mitocryptide-2(MCT-2)の単離、構造決定に成功した。またその細胞内情報伝達機構の解析を行った結果、G_<i2>タイプGタンパク質がその情報伝達に関わっていることが明らかとなった。またMCT-2の受容体について解析したところ、Gタンパク質共役型受容体FPRまたはFPRL1のどちらか一方に特異的に結合し、その活性を発現することが示唆された。さらにGタンパク質活性化ペプチドの構造情報を整理、解析することで、タンパク質の配列よりGタンパク質活性化ペプチドとなりうる、異なる配列を持つペプチド(クリプタイド)20種を予測、化学合成し好中球活性化能を検討した。その結果、選択した活性クリプタイドを予測するための物理学的パラメーターを満たす15種は好中球を活性化したが、条件を満たさないものは活性化しないことが示された。
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