研究概要 |
昨年度、リン酸化セリンを反応中心として主にC末端側の修飾を行って各種誘導体を合成し、PP1とPP2Aに対する基質特異性について検討を加えた結果、PP1の基質となるがPP2Aの基質とはならない、PP1特異的基質候補化合物の探索に成功した。本化合物は両末端にアミノ基を有する長鎖脂肪族ジアミンのリン酸化セリンとのアミド構造を有している。今年度は構造とPP1基質としての活性相関について検討を加えた。 長鎖脂肪族ジアミン構造のアルキル鎖の長さについて、C8,C10,C12,C14の化合物を合成し、その基質特異性を検討したところ、C12の化合物だけが基質となり、アルキル鎖の長さが酵素の認識に関与していることが明らかになった。また、末端アミノ基の機能を調べるため、アルキル基鎖長を固定し、末端アミノメチル基部分をカルボキシル基に変換した化合物、末端アミノ基をメチル基に置き換えた化合物をそれぞれ合成し、同様に基質としての機能を検討した。その結果、末端アミノ基をメチル基に置き換えた化合物は、弱いながらも基質となるのに対し、カルボキシル基置換体は基質とならないことが明らかになり、末端アミノ基の重要性が実験的に示された。これは基質末端アミノ基が、酵素のカルボキシル基と相互作用しているためと考えられる。合成した一連の化合物はいずれもPP2Aの基質としては働かなかった。 今後、切断されないリン酸エステルとしてチオリン酸エステル体の合成にも着手し、PPI特異的阻害剤の開発へとつなげていきたい。
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