インクジェットノズルより吐出される液滴(直径30ミクロン程度、蒸留水)を試料とし、フェムト秒レーザーパルス(プレパルス、パルス幅35fs、中心波長800nm、繰り返し周波数1kHz)を空気中で非軸放物面鏡により集光照射した。液滴吐出とレーザー照射はデジタル遅延回路を用いて精密に行った。レーザー照射によって誘起されるアブレーション現象(液滴の爆発現象)を、ナノ秒ストロボ光とCCDカメラを用いた時間分解イメージング測定により観察した。液滴表面におけるレーザー光強度が十分高い時(1mJ/pulse程度)は、表面からの衝撃波の発生・伝搬、ミストの発生など、液滴の爆発現象が顕著に観測された。レーザー光強度を徐々に低下させる(例えば0.2mJ/pulse程度)と、液滴表面でのアブレーション現象は観測されなくなるが、液滴の裏側表面でアブレーションが誘起されることが明らかとなった。これは30ミクロン程度の液滴(屈折率1.3)自身がボールレンズの役割を果たし、入射するレーザー光が液滴内部での屈折に伴い、液滴裏側で単位面積あたりの実効的なレーザー光強度が増加したことに起因すると考えられる。これはより低いレーザー光強度で効率よくアブレーションを誘起できることを示している。こうした基本的情報をもとに、次年度に行うメインパルス照射に伴うX線発生の最適化を行う計画である。
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