研究概要 |
本研究は、時間集光・空間集光が同時に成立し、Q分解能も向上させる、独創的な複合集光型結晶アナライザーを開発し、結晶アナライザー型中性子非弾性散乱実験装置の性能を革新的に高めることを目的とするものであり、具体的には、分光原理である飛行時間法に由来したユニット全体から反射される中性子が検出器に到達する時刻を一致させる時間集光、アナライザー単結晶の熱散漫性散乱に由来するバックグラウンドを低減させるためユニット全体から反射される中性子を空間的に集光する空間集光を同時に成立させる新しい配列理論[N.Takahashi et al., Nucl.Instr.Meth.A, 587, 350-362(2008)]を実証することである。結晶アナライザーとは、規則的に配列された約1cm角の小さな単結晶ウエハの集合体(ユニット)として定義される。ユニットにおける単結晶の位置や傾きなどは、ある配列理論に基づき設計される。 平成21年度は、中性子ビーム実験を行うためのBLをJ-PARCセンター物質・生命科学実験施設のBL19に定め、平成22年度上期マシンタイムの一般研究課題公募に応募し、採択された。本BLは非結合型ポイゾン減速材を線源とし、線源-試料間距離が40mと上記した論文中で仮定した配列理論の概念設計値に最も近いパラメータを有する。このパラメータを元に、ユニット試験体(1段×5列)、及び設置・調整用治具を設計・製作した。平成22年度は、ユニット試験体に高精度のモザイク性(0.4-0.5度)を有するグラファイト結晶を設置して中性子ビーム実験を行い、1段内の配列理論やユニット設計の妥当性を検証し、その結果を元に多段型ユニット本体(21段×5列)を製作する計画である。
|