研究概要 |
本研究は、電子(又は陽電子)線形加速器において、ビームを破壊することなく電子ビームのバンチ長を簡便かつ高性能に計測する新しいバンチ長モニターの開発とその実用化を目的としている。提案する新しいバンチ長モニターにより、線形加速器の真空パイプ間隙から漏れでるビームに起因する電磁放射(電波)が周波数領域で計測され,その周波数スペクトルを高精度に計測することによりバンチ長が推定される.本研究は、国内外に研究例がなくユニークな手法で、また、電子・陽電子ビームに特定するものではなく、量子ビーム全般に応用可能と考える パイプ間隙から放射する電磁放射のスペクトルはビームのバンチ長に強く依存し、かつ、電子が低エネルギーの場合(<100MeV)はエネルギーにも依存し、周波数領域はマイクロ波からミリ波に及ぶ。広範な周波数領域で高精度にスペクトル計測を行うために数値解析に基づく基本設計を行った.電磁放射スペクトルのシミュレーションに基づく数値解析により、放射電磁波の空間分布、強度分布、スペクトル分布のバンチ長依存性を解析し、検出器設計のための基本パラメータを計算した。特に、パイプ間隙の幾何学的構造の最適化は、重要な設計課題の1つでサブピコ秒のバンチ長計測には必要な解析となる。 平成12年度においては,広帯域かつ高感度なファブリーペロー共振器型電磁波検出器の試作を行ったが想定外の技術的困難に遭遇した.平成22年度においては,この技術的困難を解決するためにファブリーペロー共振器型に代えてマイケルソン干渉計共振器型への設計変更を行った.この変更により,10-50GHzの周波数帯域で高Q値(>10^4)を有する電磁波干渉計を製作し,検出器の基本性能が確認された.
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