本研究の目的は、X線マイクロビームによりタンパク質結晶をスキャンし、高感度で高速な読み取り性能を持つX線HARP検出器によって回折イメージをリアルタイムで収集・評価するシステムを開発することである。平成21年度は、33ミリ秒のフレームレートで出力される画像データの評価技術の開発を行った。リアルタイムで画像を評価するため、GPU(画像演算ユニット)を用いて処理を分散させ高速化を実現した。具体的には、画像を数十の小画像に分割し、それぞれの小画像の処理を各GPUに割り振って並列計算させるようなソフトウェアをコードした。簡単な回折ピークサーチのアルゴリズムであれば、1イメージを10~20ミリ秒で処理することが可能であることが示された。 一方、X線HARP検出器を放射光ビームラインに設置してスキャン測定を行うため、ビームラインの試料位置調整軸(ゴニオメータ)と検出器を同期させる制御系の開発を行った。放射光マイクロビームで試料をスキャンするためには、ゴニオメータと連動した回折イメージ測定が必要となる。20ミクロンのビームで33ミリ秒のフレームレートでデータを収集していく場合、ゴニオメータのスキャンスピードは20μm/33msec(0.6mm/sec)となり、ゴニオメータの駆動と検出器のタイミングは少なくとも10ミリ秒程度以下で合わせる必要がある。ゴニオメータを制御するステッピングモータコントローラを購入し、その上で動くプログラムを設計した。コントローラからトリガ信号を用いて検出器を同期させる準備が整った。
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