研究概要 |
本研究の目的は、X線マイクロビームによりタンパク質結晶をスキャンし、高感度で高速な読み取り性能を持つX線HARP検出器によって回折イメージをリアルタイムで収集・評価するシステムを開発することである。22年度は、21年度に開発を行った画像データ評価ソフトウェアを、実際のタンパク質結晶を用いたセンタリング実験に適用した。そのために、性能の良くわかっている商用のピクセルアレイ型検出器(Pilatus100K,Dectris社製)を放射光ビームラインに設置し、タンパク質結晶をゴニオメータで並進させてスキャン測定を行った。ゴニオメータ駆動とイメージ読出しを同期させ、20マイクロメータステップ(グリッド)でスキャンイメージを取得した。これらを再合成することで結晶の位置およびおおまかな大きさの情報を取得することに成功した。また、結晶に照射するX線量を(通常の回折データ収集実験に比べ)かなり弱くしても、スキャンによる位置情報取得が可能であることも示された。 一方、検出器を試料に可能な限り近接させて大きな回折角の回折イメージを取得するため、ダイレクトビームストッパーの改良を行った。検出器を近接させるためにはビームストッパーをできるだけ試料位置に近づける必要があるが、同時に回折イメージ中に写りこむビームストッパーの影が大きくなってしまう。この影を最小にするよう、ビームストッパーを可能な限り小型化した。 上記の他、イメージデータ処理を行うための高速コンピュータや無停電電源装置等の購入を行い、データ処理を効率よく行う環境を整備した。
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