本年度の研究実施計画に記載した、(1)「新規チアカリックス[6]アレーン誘導体の合成」では、本年度は5種類の合成に成功した。また、(3)「新規TCAを用いた金属抽出能の検討」としては、本年度合成に成功した5種類のうち、4種類について金属抽出実験を行い、レアメタル抽出特性の検討を実施した。抽出結果としては抽出率の差があるもののほとんど、Pd、Zrに対して選択性を示し、高いものは80%程度の抽出率を示す誘導体もあった。また、(2)「新規TCAを用いた希土類金属との錯形成能の検討」としては、本年度合成に成功した5種類のうち、リン酸を修飾させた新規誘導体についてPdとの錯体形成様式の検討を行い、Pdがチアカリックスアレーンに直接配位するのではなく、硝酸イオンとPdが錯形成を行い、その複合体がチアカリックスアレーンと錯体を形成していることが実験結果より明らかとなった。しかしながら、金属との錯体結晶構造解析はまだ行われておらず、現在結晶を作成中である。今年度には様々な結晶作成ができ、構造解析の実施ができると考える。また、他の基礎的なデータである粉末X線構造解析装置、熱分解特性などについては、本年度はレアメタル抽出特性のみの実験を行っていたため実施できなかった。しかしながら、合成手法は確立されており、来年度新たに合成する新規誘導体とともに、これらの基礎的データの採取、及び錯体様式に関する研究を実施する。今年度金属錯体の構造ではなく、新規誘導体のみの構造で論文を報告した。
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