研究概要 |
B(C_6F_5)_3触媒によるオレフィン類のヒドロジシランとの付加反応は、単純末端オレフィンでは脂肪族、芳香族を問わず、室温数時間の反応で末端位置にジシラニル期が導入された生成物を高収率で与えた。内部オレフィンでは反応は遅く実質的には進行しなかったが、環状オレフィンでは高収率に生成物を与えた。この際、室温でのノルボルネンの反応ではジシラニル基が開裂した生成物もかなり生成した。非古典的ノルボルニルカチオンの安定性のため、ジシラニル化されたノルボルニルカチオン中間体へのヒドリドの攻撃による反応の完結が遅く、Si-Siの切断とシリル基の1,3-転位に至る時間的余裕が生まれるものと考えられる。同様なSi-Siの切断とシリル基の1,3-転位は基質がビニルシランの場合にも認められたが、シリル基及びジシラニル基のいわゆるβ効果によるβカチオンの安定化効果が関与しているものと考えられる。官能基化されたオレフィンに関し、クロロオレフィンでは脱塩素反応も進行し、アルコキシ化オレフィンでは脱アルコキシ化反応が主反応となった。アルケンニトリルではニトリル基への付加反応が先行し、その後オレフィン部分との反応が進行した。α,ω-ジエンでは環化は進行せず、高分子体が生成した。長鎖のヒドロポリシランやα,ω-ジヒドロポリシランも、スチレンとは異常反応することなく高収率で対応生成物を与えた。末端アルキンとの反応は実質的には進行せず、末端アルキンとB(C_6F_5)_3との強い相互作用が示唆された。この相互作用のため、末端アルキン部分を持つオレフィンの反応は進行せず、また、末端オレフィンと末端アルキンの混合物も実質的には反応しなかった。
|