研究概要 |
光電変換特性に優れたITOレス高性能太陽電池を組み立てるための新しい透明導電膜の設計とさらなる最適化を検討した。平成22年度に実施した異種元素Liがドープされた酸化亜鉛ZnOナノロッドアレイからなる新規無機透明導電膜のみならず、ZnO表面の状態密度とドナーポリマーとの接合改善のために、低分子有機色素を単分子で固定化させた界面修飾導電膜製作と、立体規則性ポリ(3-ヘキシルチオフェン)P3HTナノファイバーマットから構成される結晶性有機透明導電膜をつくるとともに、太陽電池の組立てとセル特性評価と最適化を行った。 1.ルテニウムビピリジン錯体系色素、クマリン系色素、インドリン系色素、およびスクアリリウム系色素を単分子状にZnOナノロッド表面に吸着させた新しい透明導電膜を作製し、透過率、光電子分光スペクトル、表面ぬれ性、拡散反射赤外分光スペクトルを計測して薄膜の物性を評価した。 2.上記1.で作製した材料を用いたポリマーハイブリッドセルを組み立て、光電流および暗電流に関して電流-電圧特性を評価した。シングルダイオードモデルを適用した整流特性に関する検討や、光捕集特性(分光感度特性)、あるいは仕事関数からのデバイス特性を評価した。 3.光電変換セルとして組み立てた種々のデバイスに一定のバイアスを掛け、ある時間周期(100マイクロ秒程度)でバイアスに載る電荷量を遅延時間の長短で変化させ,その電荷量の減衰を計測するPhoto-CELIV法に関して、遅延時間、光強度、バイアス電圧を可変して計測し、キャリア移動特性としての移動度や寿命を評価した。 以上の結果から、有機色素によるZnOの表面修飾は、界面ダイポール効果、空間電荷層の制御、界面エネルギー障壁の低減をもたらし、電荷移動の促進と界面におけるバンドベンディングが実現可能であることがわかった。
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