研究概要 |
近年、開発途上国の急速な発展と世界的な人口の増加により、地球上の元素資源の供給限界が急速に速まっている。この問題に対処するために、物質を構成する元素の役割・性格を研究し、その機能や特性の発現機構を明らかにして元素に応じた代替・減量・リサイクル手法の開発や新機能の創出を目指す学術基盤の確立が急務である。 本研究では、安全なケイ素化合物であるシロキサンゲルの内部に金属触媒をカプセル化した固定化触媒を創製し、ゲル内部で反応を行なうことで高効率かつ高選択性を達成すると共に、金属触媒の容易かつ完全な「分離・回収・再利用」により、これら希少金属の使用量低減を含めた実践的な「もの創り」を達成しうる、元素戦略に立脚した触媒プロセスの実現を目的とする。 平成21年度では、まずターゲット反応として原子移動型ラジカル反応を設定した。原子移動型ラジカ反応は、触媒活性種が酸素に不安定なため触媒量の低減が課題であり、しかも触媒の回収・再利用を達成した例は液一液2相系があるにすぎない。 本反応の優れた触媒である銅-2,2'-ビピリジン触媒をシロキサンゲル内に内包するために、まず2,2'-ビピリジンの4,4'位にアルケン部位を導入した配位子を合成し、PMHSと白金触媒存在下、これと1,5-ヘキサジエンを架橋剤として2,2'-ビピリジン部位を内部に固定化したシロキサンゲルの合成を行なった。その後、1価の銅塩を用いてシロキサンゲル内で錯形成を行なうことで、ラジカル反応触媒の調整に成功した。このようにして合成した銅-2,2'-ビピリジン触媒を内包したゲルを用い、ラジカル環化反応反応における触媒活性、繰返し耐久性について詳細に検討した。その結果、触媒の耐久性が均一系の10倍程度向上すること、濾過のみで金属の混入のない、高純度の生成物が得られること、さらに繰返し再利用可能なことを明らかにした(論文発表済み)。
|