研究概要 |
近年、開発途上国の急速な発展と世界的な人口増加により、地球上の元素資源の供給限界が速まっている。この問題に対し、物質を構成する元素の役割や性格を研究し、その機能や特性の発現機構を明らかにして元素に応じた代替・減量・リサイクル手法の開発や新機能の創出を目指す学術基盤の確立が急務である。本研究では安全なケイ素化合物であるシロキサンゲル内部に金属触媒をカプセル化した固定化触媒を創製し、ゲル内部で反応を行なうことで高効率かつ高選択性を達成すると共に、金属触媒の容易な「分離・回収・再利用」により、これら金属の使用量低減を含めた実践的な「もの創り」を達成しうる、元素戦略に立脚した触媒プロセスの実現を目的としている。 平成22年度では、これまでの成果を踏まえて不斉固体触媒の創製にターゲットを置き、銅触媒による不斉シクロプロパン化反応を設定した。 本反応の優れた触媒である銅-ビスオキサゾリン触媒をシロキサンゲル内に内包するために、まずビスオキサゾリンの2,2'-位にアリル基を導入した配位子を合成し、PMHSと白金触媒存在下、これと1,5-ヘキサジエンを架橋剤としてビスオキサゾリン配位子を内部に固定化したシロキサンゲルの合成を行なった。その後、2価の銅塩を用いてシロキサンゲル内で錯形成を行なうことで、不斉シクロプロパン化反応触媒の調整に成功した。このようにして合成した銅-ビスオキサゾリン触媒を内包したゲルを用い、ジアゾ酢酸エステルとアルケンのシクロプロパン化反応における触媒活性、ジアステレオならびにエナンチオ選択性、繰返し耐久性について詳細に検討した。その結果、本ゲル触媒は触媒活性が若干低下するものの、反応における立体選択性は均一系と大差ないこと、濾過のみで容易に触媒が回収できること、さらに繰返し再利用可能な不斉固体触媒として充分に機能することを明らかにした(論文発表済み)。
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