研究概要 |
C, H, N, Oといったユビキタス元素から構成される有機ラジカルは、設計性・多様性に富み、新しい磁性材料として近年注目を集めている。申請者は、2001年に世界に先駆けて有機フェリ磁性体を発見し、これが従来の遷移金属元素によるフェリ磁性体とは本質的に異なる量子フェリ磁性体という新しいカテゴリーを開拓するものであることを示した。本研究は、有機ラジカルスピンの"量子特性"を明らかにすると同時に、高温有機磁石の開発を行うものである。本年度は以下の実験を行った。 (1) BIPNNBNOは磁気相関長が短く、低温物性の詳細を明らかにするには良質の単結晶を得ることが必要不可欠である。、合成法の最適化を行い、大量合成に成功した。結晶作成条件の最適化を現在行っている。また、磁気構造解明に向けて、重水素化の検討を始めている。ラジカルユニットの重水素化反応を検討し、実際に再現性よく合成できる方法を確立した。 (2) 新しい有機フェリ磁性体の開発が望まれている。フェルダジルラジカルを含むヘテロポリラジカルの合成研究に着手した。まず、フェルダジルのモノラジカルおよびビラジカルを複数合成し、反応条件の最適化とラジカル間配置と磁気相互作用の関係について考察した。 (3) ニトロキシドラジカルはポリラジカル化することで共鳴安定化されるが、モノラジカル結晶を単離できるだけの安定性を持ったπ共役系の開発に成功した。
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