KNbO_3-NaNbO_3系の状態図は全率固溶体を形成し、液相線と固相線の間隔が広いため固溶体結晶の優秀性が期待されるにも関わらず、融液からは結晶育成とともに組成が変化し、均一組成単結晶育成は困難である。これがKNbO_3-NaNbO_3系結晶について薄膜での研究のみが進められた理由で、同じアルカリ金属でKに対して周期律表でNaとは反対側にあるRbやCsではNaよりイオン半径が大きいため、これらをNaと共添加することで組成変動を抑制した単結晶育成が可能となる。これまで格子定数に対して互いに相殺する効果を与えるアルカリ金属の不定比性効果と固溶体効果を組み合わせ、格子定数変化を抑制し、単結晶の化学組成変動制御を試みた。昨年度は、希土類添加による不定比性の変化についてさらに調べ、結晶育成容易方位との関連を明らかにし、電気特性評価を開始した。 ファイバー単結晶育成には、汎用的な小型双楕円型ハロゲンランプ炉を用いたファイバー単結晶育成技術を用いた。大径のPtチューブを使用することで単結晶の長尺化を可能とし、生産性の向上ができた。種結晶を用いることで単結晶の育成方位制御も可能であり、希土類元素の添加による育成容易方位の変化を調べることに重点を置いた。種結晶を使用しない従来法では、c軸方位で単結晶が成長し、特性的には他の方位のほうが優れているため、優れた方位での単結晶育成を試みた。 育成した単結晶についても、誘電率・誘電損失の温度依存性、インピーダンスの周波数依存性、強誘電ヒステレシスを中心に評価した。RbやCsの添加だけでもリーク電流の改善が期待されるが、単結晶では結晶粒界が無いことからさらにリーク電流が改善できるものと期待でき、結晶欠陥と関連させて議論した。
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