KNbO3-NaNbO3系は全率固溶型状態図を形成し、液相線と固相線の間隔が広いことから固溶体結晶の優秀性が期待されるにも関わらず、融液からの結晶育成では均一組成単結晶育成は困難であるとされてきた。しかし、同じアルカリ金属であるRbやCsではNaよりイオン半径が大きく、これらをNaと共添加することでイオン半径の平均化が達成でき、組成変動を抑制した単結晶育成が可能となった。これまで、共添加技術の有効性が確認でき、電気特性(強誘電ヒステレシス曲線、共振-反共振インピーダンス特性等)の測定から、これらがKNbO3や、KNbO3-NaNbO3を凌ぐ性能を有することがわかってきた。 単結晶としてはc軸方位が容易成長方位であるため、この方位ではうまく材料特性を引き出せないでおり、今年度は、c軸以外の方位での結晶育成を試みるとともに、Bi4Ti3012等で確認された希土類元素の添加による容易成長方位の変化について検討を行ったが、うまく初期の目的を達成することはできなかった。 しかしながら、バルク単結晶と電気特性評価を比較したところ、バルク単結晶では育成したままの分極処理を施さない状態では小さな圧電特性(d33圧電定数、誘電率・誘電損失、強誘電ヒステレシス曲線、共振-反共振インピーダンス特性等)しか得られなかったが、ファイバー単結晶では分極処理を施さなくても10倍程度大きな圧電特性が得られた。これは、ファイバー単結晶の長所の一つである自己分極効果によるものと考えられ、単結晶育成過程の大きな温度勾配により生じたものと考えられる。 さらに、KNbO3系の温度を上げるとK20の蒸発によりK4Nb6017が生成するが、この電気特性については報告例がなかった。そこでK4Nb6017ファイバー単結晶を育成し、圧電・強誘電特性を評価した。壁開性があったが、何とか強誘電特性を測定することができた。
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