近年、LD(学習障害)、HFPDD(高機能広汎性発達障害)、発達性協調運動障害など、社会性の発達面において未熟さのある軽度発達障害児に対し、積極的なる特別支援教育を行うことが重要とされている。軽度発達障害者は人により症状が多様であり様々な問題をかかえているが、問題のひとつとして他者認知が困難な点があげられる。そのことが原因でコミュニケーションがうまく図れず、対人関係においてトラブルを生じることも多い。例えば、場面状況から相手の感情を推理する感情の認知や、話し手の隠れた意図を推理する間接的な発話などが困難であるという報告がある。そこで本研究では、軽度発達障害者が苦手とする他者の表情認識、および、表情による感情表現などといった、ソーシャルスキルの形成には欠かせない能力をトレーニングするための支援システムの開発を目的とする。 H21年度は、コンピュータ画面上に刺激表情(笑顔、嫌悪、怒り、恐怖、悲しみ、驚きなどの基本6感情)を提示し、刺激表情を見たときの被験者(軽度発達障害者、および、比較対象としての健常者)がどのような表情として認識したのかを調べるとともに、刺激表情に対する被験者の反応として表出された表情(被験者の顔面筋の動きを画像認識装置により計測し)分析した。このことより、性別の違い・刺激表情の種類の違いによる表情の認識率・同調の様子について基礎的なデータを得ることが出来た。また、提示された刺激表情と、そのときの被験者の同調表情について、両者のタイミング・表情筋の動きの強度について分析を進めている。H22年度は、軽度発達障害者の表情認識率を向上さる・同調的な表情の表出させるためのトレーニングシステムの開発を進める。
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