近年、LD(学習障害)やHFPDD(高機能広汎性発達障害)などといった社会性の発達において未熟のある軽度発達障害児(者)に対して、教育機関が積極的に支援していくことが重要な課題とされている。しかし、欧米などでの取り組みに比べると、我が国においては(顕著な取り組みをしている教育機関や団体は存在するものの)、全国的に積極的な支援は行われていないのが現状である。 軽度発達障害児(者)の症状は多様であり様々な問題があるが、そのひとつとして他者認知が困難な点があげられる。そのことが原因でコミュニケーションがうまく図れず、対人関係においてトラブルを生じることも多いとされている。 そこで、本研究では、社会性のスキルとして欠かせない表情を介したコミュニケーションをトレーニングするためのコンピュータによる支援システムの開発を進めている。 平成22年度は、計画書に基づき、 (1) 刺激表情に対する表情の同調の分析 刺激表情(幸福、嫌悪、怒り、恐怖、悲しみ、驚きなどの基本6感情に基づく人物の映像)のサンプルを増やすため、被写体の協力を呼びかけ映像の作成作業を進めた。 次に、被験者に刺激表情を見せたときの反応、すなわち、表情の同調について画像処理により表情の分析を行った。新たに、顔面筋の筋電図を計測する方法を追加し、同調のタイミングや各表情筋の動きを分析するための予備実験も進めた。 (2) 表情認識・表情トレーニング支援システムの開発 上記の刺激表情を表情認識トレーニングのデータとしてシステムに組み込み、被験者に対して予備実験を行い、プロトタイプシステムの開発を進めた。さらに、被験者の表情認識処理部分についてもシステムへの組み込み作業を進めた。 研究成果として、表情の同調について国際会議で発表した。黒眼の形状と瞬き時の形状変化に着目した新しい表情認識手法を提案し、論文投稿し掲載決定となった。
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