子どもが救命救急・応急手当の手技や道具の操作で、困難を感じたり、うまくできないという問題点の検討のため、子どもの道具操作の際の動作パターン解析を行った(2011年6月にIBRO国際学会で報告)。その結果、一連の動作は小さなユニットに分割されることが分かった。そして一連の動作がスムーズにできるようになると、前の動作が終わる前に次の動作をオーバーラップさせて開始していること、しかし失敗すると再び1つの動作が終わってから次の動作を開始するというパターンに戻ることが分かった。また前年までの知見(諸外国の事例と日本の実情と課題)を論文にまとめ報告した(印刷公表済1編、印刷中1編)。そして、これまでの成果を基に教育プログラムの原型を作成し、児童の協力を得て検証と評価を行った。その結果、正確さと迅速さは同時には向上せず、個々の動作が正確にできるようになってから、迅速に行えるようになることが分かった。また動作の一部のオーバーラップでは説明できない大幅なスピードアップの主要因は無為な時間がなくなることで、これはドリル形式の繰り返し学習によって獲得できることが分かった。更に、胸部圧迫は体重を使えば力の弱い子どもでも効果的にできるが、傷病者の額を押さえて下顎を拳上し、鼻をつまんで口腔に十分な量の息を吹き込む人工呼吸は、手が小さく指の力が弱く肺活量も少ない子どもには難しかった。人工呼吸がうまくできない場合は固執せず、確実にできる胸部圧迫をやって血液循環を維持して救助を待つ、という指導の必要性が明らかになった。教材は、個々で読むテキストよりも、大きなイラストボードで仲間と一緒に見て学ぶ協同学習の方が効果があることも分かった。これらの成果を反映させて教育プログラムを完成させ、電子ファイル化してCD等のメディアにコピーして、小学校の教育現場で活用できるようにした。
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