子どもの死因の第1位は不慮の事故で、その過半数は大人がいない子どもだけの状況で発生している。子どもが救命救急・応急手当(救急法)ができるようになって、大人が救助に来るまでの間を持ちこたえられれば、救命の可能性が向上する。本研究は、小学校高学年の子どもの救急法の能力向上の教育プログラムを作成することを目的として行った。小学校高学年の子どもでも教育・指導方法の工夫により、救急法の能力を向上させることができた。全体を小さなユニットに分け、1つ1つについて教師の指導・子ども達が自分でやってみる、というステップを繰り返すドリル学習が効果的であることと、友人と協力して確認しながらやっていくグル-プ学習が、ミスや二重事故を防ぎ、実践力と確実性を高めることが分かった。また胸部圧迫は力の弱い子どもでも体重をかけて押すよう指導すれば十分に圧迫できることが分かった。一方、人工呼吸は肺活量が少なく手が小さい子どもには難しいので、うまくいかない場合は固執せず、確実にできる胸部圧迫をして援助を待つよう指導すべきとの結論を得た。また、道具を使う場合、子どもの利き手や道具の位置や向きが子どものパフォ-マンスに影響を与えること、重要な兆候を見落とさないよう、どこを見るように指導するかなど、大人とは異なる指導上の配慮が必要なことが分かった。これらの成果を踏まえて教育プログラムを作成し、電子ファイル化してCD等のメディアにコピ-して、小学校の教育現場で活用できるようにした。
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