平成21年度においては、購入予定の鏡映像呈示装置の性能を吟味する段において自作のプログラムへ変更を行った。このため、一部の研究計画については翌年度へ持ち越されることとなった。 年度内では、小児の注意欠陥性多動性障害(以下、ADHD)患者を対象とするサッケード眼球運動計測の結果、年齢一致の定型発達児(健常ボランティア)群との比較において、統計学的に有意な違いが証明された。このことから、眼球運動の反応時間の分布や異なる刺激課題を用いた際に出現する分布のばらつき度合いなどを基に新たな解析手法の検討を実施中である。これによって、小児ADHD患者の診断ばかりでなく病態評価が可能となり、服薬量の調整に必要な客観的指標(バイオマーカー)としての利用も視野に入れて進める。 また、自作の新たな刺激呈示システムとしては、従来のように検出されるすべての眼球運動を受動的に記録するというものから、システム回路の一部にフィードバック回路を組み込み、成功試行のみを効率よく抽出して記録するというシステムへの改良を施した。これには刺激の呈示および眼球運動の検出の双方において十分な空間分解能と、高い時間分解能(サンプリング周波数:1kHz以上)を備えていることが必要であるため、検出システムを従来のリンバストラッキング法から高速度カメラによる角膜反射法(プルキンエ像を捉える方法)に変更し、刺激の呈示には検出システムと連動するようなプログラムを新たに作成中である。 上記と並行して、健常成人約100名におけるサッケード眼球運動計測を行い、年齢と反応時間に対するギャップ効果の変化について検討を行った。
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