研究課題
平成22年度においては、前年度の繰越しとなった予算により視覚選好性に関する新たな刺激呈示システムの構築を行い、また、サッケード眼球運動計測による小児の広汎性発達障害患者の病態評価およびそれに関する成果発表を行った。新たな刺激呈示システムとしては、従来のように検出されるすべての眼球運動を受動的に記録するというものから、システム回路の一部にフィードバック回路を組み込み、成功試行のみを効率よく抽出して記録するというシステムへの改良を施した。これには刺激の呈示および眼球運動の検出の双方において十分な空間分解能と、高い時間分解能(サンプリング周波数:1kHz以上)を備えていることが必要であるため、検出システムを従来のリンバストラッキング法から高速度カメラによる角膜反射法(プルキンエ像を捉える方法)に変更し、刺激の呈示には検出システムと連動するようなプログラムを新たに作成中である。また、平成21年度より継続して行ってきた小児の注意欠陥性多動性障害(以下、ADHD)患者を対象とするサッケード眼球運動計測の結果、年齢一致の定型発達児(健常ボランティア)群との比較において、統計学的に有意な違いが証明された。この成果は、平成22年9月開催の第33回日本神経科学会大会の一般講演において口頭発表を行い、現在、論文執筆中である。さらに、本研究のデータを用いて受信者動作特性解析(ROC解析)を行った結果、眼球運動パラメータのうちの数種が、ADHDの診断において感度および特異度の点で有用である可能性が示唆された。このことから、眼球運動の反応時間の分布や異なる刺激課題を用いた際に出現する分布のばらつき度合いなどを基に新たな解析手法の検討を実施中である。これによって、小児ADHD患者の診断ばかりでなく病態評価が可能となり、服薬量の調整に必要な客観的指標(バイオマーカー)としての利用も視野に入れて進める。
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http://researchmap.jp/ytkitamura/