研究概要 |
交通事故と路上犯罪は、子どもの日常生活での二大リスクといっても過言ではない.これらの主たる発生現場が道路空間であり,その安全性の確保が急務とされる. 交通事故,路上犯罪の発生には,加害者と,被害者が発生現場である道路空間に存在することに加えて,現場周辺の交通量や交通施設,路上設置物,沿道建物の状況など,物的要素の影響が考えられる.このため,物的要素を制御できる道路ネットワーク・空間設計や交通規制などといった交通計画的手法が有効であると考える.以上より,本研究は子どもの交通事故・路上犯罪のリスク対策のための,交通計画的手法による道路空間設計の効果を検討することを目的とする. 該当年度においては,既に作成した道路空間の物的要素と,子どもの交通事故・路上犯罪遭遇リスクの関係を表現するモデルより,同一小学校区内での各リスク分布の比較を行い,さらにモデルより得られたパラメータを用いたシミュレーションを行うことを目標とした.そのためには同一の小学校区の登下校実態に関するデータが必要である.これまでスクリーンライン調査等により児童の交通量を測定してきたが,児童の登下校状況を十分に把握できず,校区内の住宅分布より登下校児童の時空間分布を推計しモデルに導入する方法を用いてきた.今回は,福岡市内の複数の小学校区を選定し,児童を対象に登下校の経路,不審者や交通事故遭遇,放課後の行動に関するアンケート調査を行った. 現時点ではアンケート調査データの集計・分析が終了した段階である.得られたデータをモデルに導入することで通学路上での交通事故遭遇リスクと路上犯罪遭遇リスクの分布が求められ,これにより児童の交通事故遭遇リスクと不審者遭遇リスクの校区内での空間分布および通学路空間の物的要素の各リスクへの影響度を比較し,さらにシミュレーションにより交通計画的手法による各リスクの変化の考察・評価が可能となると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由としては以下が挙げられる. ・児童の登下校実態に関する調査が当初の計画では思うような結果が得られず,方法を変えた再調査を余儀なくされた. ・通学経路のリスク算出(一般化費用算出)について,当初計画していた経路選択モデルから校区内空間のリスク分布モデルの採用に変更したため,その検討に時間を要した. また,育休等で予定していた研究期間の途中で中断申請を行うため,今年度の目標達成には至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
11.に述べたように,問題に対しての修正や再検討のため研究の達成度が遅れていたが,それらの問題については解決する見込みであること,本来は本年度が最終年度であり,既に主要な調査や分析についてはほとんど終了している状態であることから,復帰後については中断期間と同程度の期間で当初の研究計画の内容を達成できると考えている.
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