本研究の目的は、1歳6か月から3歳までのコホート調査において、母親自身の要因や子どもへの育児方法についての要因が子どものう蝕に影響を及ぼすという仮説モデルを検証し、子どものう蝕に直接の影響を及ぼすと考えられる育児方法についての要因を明らかにすることであった。 本研究は、1歳6か月と3歳児歯科健診の場を利用した2年間のコホート調査であった。長崎市の協力を得て、平成19年4月から調査を開始し、1歳6か月児歯科健診受診者のデータを収集した。アンケート調査を実施するにあたり、平成互9年1月19日に長崎大学医歯薬学総合研究科倫理委員会の承認(承認番号:0729)を得た。平成21年度では3歳児歯科健診受診者のデータを収集した。平成22年度では3歳児健診で得られたアンケートの結果を入力し、長崎市で実施された歯科健診結果と合わせて統計学的解析(川下、齋藤、福田が担当)を行った。 その結果、海外の報告にあるように、子どものう蝕と母親の社会的背景や喫煙状況との関連が認められず、母親の歯科保健行動や子どもの間食回数と家庭でのフッ化物の使用状などの育児方法が子のう蝕に直接影響を及ぼすことが示唆された。このことから、乳幼児健診の場などを利用して、保護者を通じた子どもの歯科保健指導をより充実させることで子どものう蝕の減少に貢献できると思われた。
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