今まで、報告者らは日本の農村直系制家族の変動を中心に、個人の生き方、ライフコース、世代間関係に視点をあて分析をしてきた。今年度はすでにあるデータの整理と追加の調査を行った。今年度は過去に得たデータから、子どもの独立過程を中心に整理する作業を行った。膨大な面接調査結果のデータのため、単年度のみでは課題やテーマに関して十分照合するような作業がまだ出来てはいないが、実態把握は概略可能になったのが大きな成果である。 それぞれの世代において、世代間で次の世代、子どもに何を残し、何を伝え、何を援助してきているかの実態を把握し、今の親世代が何をしなければならないかの課題を見出そうとしている。親がどのように子どもの離家・独立・職業選択の援助をしているかについて見た結果、子どもの人数よりは性別による相違の方が明確であることが確認できた。しかし、1人の子どもの場合は、同居することを親が要求し、離家するときは止むを得ない場合に限っている。農業継承、家の継承を子育ての中で強く期待している傾向がある。子どもが複数いる場合は、長男の重みが大きいことが示された。少子化、人口減少社会になりつつある今日、今までのような農業継承のあり方、土地所有制度、農業経営では不可能であることが、子どもの職業選択の側面からも示されている。この点は継承問題に参考になると思われる。 また、農業の起業化を目指したい女性たちに、暮らしの実態、農業へのかかわり、自分が親からどのような援助を受けたか、自分の子どもにはどのような援助を行っているか、または行ったか等の実態と意識調査を行った。その結果は現在分析中である。このようなテーダをもとに世代間比較、国際比較を試み、今後、子どもが育つ環境、援助問題への示唆になるように努力したいと取り組んでいる。
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