今年度は世代差(世代間関係)と文化差(国際比較)の2つの軸からテーマを考察した。文化差に関して、調査対象地の行政が中学生をフランス・ボーヌ市に派遣、ホームスティをして交流を行った。これに同行し、参与観察を兼ねた聞き取り調査を実施した。子どもを外国でホームスティさせることは異なる文化体験、精神的な自立にも有効であることが確認できた。ボーヌ市の調査結果からは、幼少時の子育てはかなり社会的援助が充実している。結婚のための親からの援助はほとんどなく独立する。農業継承は継承させたい場合、幼いころから父親の仕事を見せている。調査をした事例は家族経営であったが、企業化していて、日本で言う農家のイメージはない。さらに、農業、福祉の先進国オランダの農家について聞き取り調査を行った結果、子どもの独立過程をめぐる親の援助については社会的な援助が整備されているため、親の子育てに関する負担感は少なかった。親から子供への農業の継承の仕方も、親子や親族間の契約関係で行われる。早い時期から大人になるまで職業教育を行い制度が整備され、親の費用援助はない。世代差(世代間関係)について、独立過程を子どもの立場から考察した。成人を迎えた年齢の大学生を対象に調査した結果、就学で離家することは独立過程の第一歩との認識が強い。就職をして経済的自立をしたいが、就職難、雇用問題を深刻に受け止めている。親からの自立とは、経済・生活・自己決定が出来ること、さらに結婚して独立し、親子が支え合えるような世代間関係が形成したいという。しかし、今日、若者の就職難、親の生活困窮など親子が支え合う関係の必要性、祖父母の年金で孫の学費を援助するなど世代を超えた援助、また大学生の奨学金で親子が暮らさなければならないような貧困の実態が新たな課題として浮かび上がってきた。
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