昨年度、うつ病の動物モデルである嗅球を摘出した(olfactory bulbectomy : OBX)マウスの母性行動を解析したところOBXマウスの母性行動が障害され、その障害は、ドパミン(DA)アゴニストであるアポモルヒネによって改善されたことから中枢のDA作動性神経の機能変化が関与することを行動薬理学的に見出した。中脳辺縁系のDA作動性神経回路は、母性行動の基盤となっている報酬機能を司っていることが知られており、その機能不全は、母性行動障害を招くことが予想される。本年は、報酬機能を評価する為に嗜好性テストの一つであるsucrose preference testを行った。その結果、出産後OBXマウスの報酬機能は著しく障害していた。さらに、DA神経のプレシナプスの機能を検討する為、DAの前駆物質であるL-DOPAがOBX誘発性母性行動障害に及ぼす影響並びにDA神経のプレシナプスのマーカーであるチロシン水酸化酵素(TH)レベルを測定した。 L-DOPA投与によってOBXマウスにおける母性行動障害が有意に改善した。側坐核のTHレベルは正常レベルであった。これらのことから、母性行動の原因として報酬機能の低下及び中脳辺縁系のDA神経機能変化が示唆された。しかしながら、中脳辺縁系に存在するDA神経のプレシナプス機能は正常である為、次年度は、後シナプス側のDA受容体の機能について検討する予定である。
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