昨年度末まで、うつ病の動物モデルである嗅球を摘出した(olfactory bulbectomy: OBX)マウスの母性行動障害が、報酬機能の低下に基因している可能性を示唆した。さらに、その障害には、中脳辺縁系のドパミン(DA)作動性神経の機能変化が関与することを行動薬理学的に見出した。しかしながら、中脳辺縁系のDA神経のプレシナプスの神経機能変化には変化がなかった為、今年度は、後シナプス側のDA受容体の機能について検討したところ以下の結果が得られた。1.出産後0日目における母親マウスの側坐核のcore及びshellにおけるDA1様受容体とDA2様受容体をそれぞれ[3H]SCH23390と[3H]racloprideを用いて脳内分布を測定した。その結果両受容体ともOBX群及びコントロール群間で有意な差は認められなかった。2.出産後0日目における母親マウスの前脳DA受容体下流の細胞内情報伝達系の一部であるcAMP responsive element binding protein(CREB)及びc-fosの遺伝子の発現がコントロール群と比較しOBX群において減少していることを明らかにした。以上の結果より、OBXマウスの母性行動障害には、脳内DA受容体下流の細胞内情報伝達系の機能低下が関与していることが確認された。また、統合失調症の神経発達障害モデルである幼若期腹側海馬障害ラットの母性行動を観察したところ、コントロール群と比較し有意な差は認められなかった。
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