前年度までに収集したドイツおよびスウェーデンにおける保育所設置基準についての比較分析をおこなった。ドイツは連邦共和国であることから州の権限が非常に大きく、東西ドイツ時代の影響から各州における保育の現状および国が目標として掲げている数値の達成度にも依然として大きな差異が存在する。 本研究が対象としている旧東ドイツザクセン州では、保育所入所児童の割合は高いものの、旧東ドイツの基準でつくられた保育所では新基準を満たせず保育可能児童数が減少したこと、出生率が回復傾向にあることから保育所を増設している。スウェーデンでは国によるガイドラインに一部数値目標も見られるが、実際の運用においては各地方自治体の裁量に任されている。本年度はスウェーデン市・ウプサラ市の保育所建築担当課を訪問し、国のガイドラインと地方自治体の持つ設置基準の関係性、地方自治体における設置基準の運用方法などについてのヒアリング調査をおこなった。ウプサラ市では施設基準について明確な数字を示していないが、「ローカルプログラム」として一定の数値基準に基づいたモデルとなる設計プランを持っており、新設する就学前学校についてはローカルプログラムに沿った設計がなされている。市ではローカルプログラムを建築家の意見を取り入れてまとめ、国にモデルプランとして提案をおこなっている。 待機児童問題や保育ニーズの多様化、また、幼保一体化を含めた乳幼児施設の今後のあり方など、日本の保育を取り巻く課題を整理し、ドイツおよびスウェーデンにおける保育所設置基準や制度を参考に、子どものための保育環境の質の維持・向上を目指した環境整備の指標について考察した。
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