本研究の目的は、マウス(B6C3F1)を用いて、こどもの放射線被ばくによる発がんリスクと寿命短縮のデータを提供するとともに、発達期の細胞の放射線応答の特徴や発生した腫瘍のゲノム損傷の違いなどを明らかにすることである。途中の結果は、生後1週、3週である新生児期から思春期前のγ線被ばくによって早期に死亡する個体が増加している。その死因は肝がんが多い傾向にある。また、リンパ腫の感受性をみるための4回照射(Kaplan法)による実験群を設定し、観察中である。突然変異を検出するためのgptマウスに4Gyを照射し、生後、6ヶ月の肝臓を凍結保存した。12ヶ月齢でも凍結する予定である。胎児期から成体期までの肝臓の細胞の放射線応答を免疫組織化学的に調べたところ、胎児期の細胞は照射後直ちに分裂を止め、一部の細胞はアポトーシスを起こした。一方、生後1週齢の肝臓は、被ばく後も増殖を止めることはなく、細胞周期のチェックポイント機構が破綻していることが示唆された。成体期は全く分裂しておらず、アポトーシスもみられなかった。今後、生涯飼育して被ばく時年齢の感受性時期を定量化するとともに、発生した腫瘍(主に、肝腫瘍に着目する)のゲノムアレイ解析をして、欠損や増幅部位の同定を行う。
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