本研究では、CT装置のX線射出口に非対称な形状を持つ吸収フィルタを装着し、測定を行う事で1回のスキャニングでDE(Dual Energy)法による再構成像を得る方法の確立を目的としている。 昨年度より3次元的なコーンビーム方式のCTへ拡張していくことを検討し、尤度を評価基準とした反復アルゴリズムを用いることで、3次元非対称フィルタにより取得された投影データからDE再構成可能であることに関しては昨年度より確認してきたが、本年度は主に以下の2点に関して検討を行った。 1. 同じビームラインで2回の計測に基づき各ビームライン毎に非線形連立方程式を解く事でエネルギー分離を行う方式の場合、対称フィルタではDE再構成は不可能であるが、コーンビームの場合で本研究が採用する投影データ全体で尤度を評価基準とする反復アルゴリズムを用いる場合、フィルタの非対称性は必ずしも必要ではない。そこで、様々な形状の対称フィルタと非対称フィルタを設計し、数値シミュレーションにより解への収束の速度を評価基準としてどの形状のフィルタが適しているかという観点から極めて多数回のシミュレーションを実行した。その結果、急峻な立ち上がりを持つ非対称フィルタは如何なる対称フィルタを用いた場合よりも解への収束が速く、安定して再構成が可能である事が判った。 2. 急峻な立ち上がり形状の非対称フィルタを実際のコーンビームX線射出口に装着する際、設置の精度によって再構成性能に大きく影響すると考えられる。即ち、設置位置の誤差が大きくなると管球の回転中心付近でスペクトル構造の異なるX線を照射できなくなる領域が大きくなってしまう問題が考えられる。DE法においては、こうした領域が存在することは求解が不能となる事を意味する。本研究では、撮像領域を部分的に低分解能化する事で、そうした領域がある程度存在しても再構成に与える影響を極力少なくする方法を発案し、シミュレーションによりそれが有効に機能する事を確認した。
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