マイクロトモグラフィ法は、CTスキャンの原理により物質の三次元微細構造を明らかにする手法である。生体組織の三次元解析法としては、共焦点顕微鏡などの光学的手法も報告されてきているが、蛍光色素の特異的発現や結合を前提としており、ヒト組織への応用は難しい。また、可視光等を使用する限り、不透明な生体組織の三次元構造は解析できない。 一方、X線は生体を容易に透過するため、組織内部の観察が可能である。このことは、レントゲン写真により人体内部が観察できることからもわかる。従って、生体組織にマイクロトモグラフィ法を適用すれば、組織の微細な三次元構造を明らかにすることができる。本研究では、マイクロトモグラフィ法により、生体組織の三次元構造をミクロン~サブミクロンスケールで明らかにすることを目的として構造解析を行った。 平成22年度は、マイクロトモグラフィ法による生体組織の三次元構造解析法を確立するため、組織固定・染色・標本調製を行い、構造解析に適した標本を作成することを主要な課題とした。昨年度に検討した条件に基づいて、精細な解析像が得られる染色を行い、細切して適切な大きさの試料とした。放射光X線は迅速な測定を可能にする反面、試料へのエネルギー照射量が大きい。これに耐えられるよう、エポキシ樹脂に浸漬した後に樹脂包埋し、測定試料とする方法を検討した。樹脂の充分な硬度を確保するために、溶媒から樹脂液への置換時に充分な浸透が得られる条件を確立し、高分解能解析が可能な標本を得た。 また、昨年度までに測定したデータの再構成計算や各種の画像処理を行い、大容量データの取り扱い方法を確立した。空間分解能の検定のための標準試料を用いて、分解能評価もあわせて行った。結果の詳細については、学術誌等で発表しているとおりである。
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