本研究計画は、化学治療において腫瘍と正常組織の酸化還元状態、酸化状態(酸素分圧マッピングを含む)を低侵襲あるいは無侵襲のin vivo MRイメージングで評価する新しい技術を開発することにある。本年度の研究は、全て治療を実施しない担癌マウスに対して実施した。(1)担癌マウスの準備:大腸癌細胞(colon26)の皮下移植担癌マウス(移植後2~6週目)を使用し、in vivo実験を行った。(2)独自に合成されたニトロキシル派生物から、oxy-reduction potentialsと抗酸化作用を考慮し、in vitro実験に使用するロットを選択した。本実験のために(A)voltametryを用いて、ニトロキシル派生物のoxy-reduction potentialsを選択したロットが十分に機能を有しているか計測、(B)電子スピン共鳴スペクトル法のスペクトル解析を用いて、抗酸化作用を試験した。(3)担癌マウスにおいてニトロキシル派生物の経静脈投与後の分布をMRイメージングにて可視化する。7T-MRI(放医研とJASTECの共同開発、Bruker社製コンソール)およびマウス体幹専用の2チャンネル・フェイズドアレイRFコイルを使用した。マウスの全身を撮像し、脳、肝臓、腎臓、腫瘍部などにおけるニトロキシル派生物の動態を解析した。(4)担癌マウスにおいて、正常組織と腫瘍組織において、ニトロキシル派生物から発生する信号の違いを解析した。正常組織では酸化状態がとても飽和的であるのに対して、腫瘍部では、フリーラジカルの酸化作用であったとしても、酸化に対して強い抵抗性を示す事が知られている。腫瘍を持つ個体において、その正常組織において、MRIの信号減衰が遅れる傾向を示した。
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