本研究計画は、化学治療において腫瘍と正常組織の酸化還元状態、酸化状態(酸素分圧マッピングを含む)を低侵襲あるいは無侵襲のin vivo MRIで評価する新しい技術を開発することにある。そのために、(1)独自に合成した酸化還元センサー・プローブ(脳腫瘍用の抗癌剤ロムスチンと結合したニトロキシル標識化合物)、(2)酸化状態の減少(oxy-reduction potentials)に関するNMR縦緩和時間変化の非線形モデリングのためのミカエリス・メンテンの変法に基づく独自理論を用いた。昨年度までに、治療を実施しない担癌マウスを準備し、独自に合成されたニトロキシル派生物から、oxy-reduction potentialsと抗酸化作用を考慮し、in vitro実験に使用するロットを選択、MR容積測定を用いて、ニトロキシル派生物のoxy-reduction potentialsを選択したロットが十分に機能を有しているか計測、電子スピン共鳴スペクトル法のスペクトル解析を用いて、抗酸化作用を試験した。本年度は、治療を実施する担癌マウスに対して、(1)担癌マウスの治療として、全ての担癌マウス(神経芽細胞腫同所移植、大腸がん皮下移植、グリオーマ同所移植、および対照)に、抗がん剤ロムスチン治療を実施、(2)高磁場MRIを用いて、抗がん剤ロムスチン治療における腫瘍の増殖を可視化し評価、(3)ロムスチン治療後の担癌マウスにおいて、4種類のニトロキシル派生物の経静脈投与後のダイナミクスをMRIにて可視化し、ニトロキシル派生物の動態を解析した。(4)縦緩和時間の変化を半減期を指標に解析し、酸化還元のマッピングを作成、各モデルで特徴的な結果を得た。本法は、がん組織評価法と有用と考えられた。これらの結果は、英語論文にまとめ、成果として国際誌に発表した。
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