研究概要 |
Trichoderma reeseiは、セルラーゼ高生産菌であり、セルロース系バイオマス糖化に必要な酵素をすべて持つことが知られている。しかしながら、β-グルコシダーゼ(BGL)活性が他のセルラーゼ活性に比べて低く、セルロースの完全糖化のためには、T.reeseiセルラーゼ剤にBGLを添加する必要があることが判明している。T.reeseiがセルロース培養時に発現するBGL3種(CellA,Cel3A,Cel3C)の生理的役割を明らかにすることで、T.reeseiのセルラーゼ生産能力の向上及びT.reeseiセルラーゼの糖化能力の向上のための知見を得ることを研究の目的としている。 各酵素の酵素学的性質を明らかにするため、異種宿主での発現を試みている。Cel1A及びCel3Aは、前年度までに大腸菌を宿主として発現させ酵素学的性質を明らかにしてきた。そこで平成21年度は、Cel3Cの異種宿主発現を試みた。大腸菌を宿主として発現を試みたが、活性が検出できるほどの発現が見られなかった。酵母を異種宿主とした発現を試み、Schizosaccharomyces pombeを宿主として細胞内での活性を有する形での発現を確認した。同様にSaccharomyces cerevisiaeでの発現を試みている。今後、組換えCel3Cを精製し、酵素学的性質を明らかにする予定である。 各酵素のT.reesei破壊株を作成し、それぞれの破壊株のセルロース代謝及びセロビオース代謝を調べることにより、各酵素の生理的役割を明らかにしようとしている。平成21年度は、cel1a遺伝子及びcel3a遺伝子破壊用ベクターの作成を終えた。今後、各ベクターを用いてT.reeseiを形質転換することにより、各酵素遺伝子破壊株を作成する。cel3c遺伝子破壊用ベクターの作成も同様に行う。
|