稲作から廃棄物として派生する稲わらなどのソフトバイオマスからバイオ燃料を生産する際のエネルギー投入量を軽減させることを目的として、5炭糖・6炭糖を高発酵効率でエタノールへ変換することが可能で、さらに加水分解酵素を分泌する新規な糸状菌を活用して、次世代型のバイオエネルギー生産システムへの変換システムである糖化発酵同時進行(CBP)プロセスを構築する。この目的を達成するために、まず初めに生化学的解析を用いることで、エタノール発酵に関する代謝フローを解明することを検討した。 稲わらに中に多量に存在するペントースからエタノールを高変換効率で生産させるために、事前のスクリーニングで得られたMucor変異株内の5炭糖・6炭糖の代謝およびエタノール発酵に関連する酵素群の機能について生化学的観点から検証を行い代謝-発酵のフローの解明を試みた。その結果、この変異株はD-キシロースの代謝酵素であるXylose redactase(XR)およびXylitol dehydrogenase(XDH)が野生株と比較して高発現し、D-キシロースを速やかに代謝できること、Pyruvate decarboxylase(PDC)も野生株と比較して高発現していること、さらに、エタノール生成に関与するAlcohol dehydrogenase(ADH)が野生株と比較して培養初期から高発現していることが判明した。さらに、この変異株は好気条件下でエタノールを酸化的に代謝するAldehyde dehydrogenase(AIDH)活性が極めて弱いことが判明した。これらの結果から、Mucor変異株は、野生株と同様のキシロースからエタノールへの代謝経路を有し、各代謝酵素が活性化していることと、また、エタノールの好気的代謝が行われず、高い発酵効率を維持できることを実証できた。
|