研究概要 |
平成22年度に構築した人工林ストックの空間増減モデルをベースにして,平成23年度においては,木材供給能力と住宅寿命を考慮し,環境資源勘定体系を利用しつつ空間的にローカルな木質循環の持続可能性を検討した. 本年度の研究では,長寿命型住宅を導入したことによる木材需給量および炭素固定量への影響を,木材供給量と需要量の双方で地理情報を考慮しつつシナリオ分析を行った.木材供給面では効率的な木材搬出を行える地理条件の設定を行った.木材需要面では長寿命型住宅の導入と国産材により住宅用木材を賄うことを想定し,木材供給範囲を製材所との地理関係から設定を行った.本研究により得た知見を以下にまとめる. 1)道路からの距離,傾斜角,製材所までの距離の3つの地理条件を考慮した木材供給量の推計を行うことが可能になり,和歌山県の人工林では木材供給が容易に行える人工林として全体の約60%の面積が設定された. 2)現在の住宅寿命が長寿命型住宅に置き換わることで木材需要量は約半分に減少する.そのため,木材供給余力は住宅の平均寿命を現状維持よりも延長することで大きくなり,持続的な木材供給が可能になることが明らかとなった. 3)1年あたりに得られる炭素固定量は減少する.2006年から2050年までに得られる炭素固定量の累積は平均寿命を延長することで現状維持よりも多く得られることが明らかとなった.
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