近年、化石燃料の使用に伴い発生する二酸化炭素など温室効果ガスによる地球温暖化が問題となっており、一方で、世界的な需要と消費の増加によるピークオイルの懸念も取り沙汰されてきている。そういった背景から、カーボンニュートラルな再生可能エネルギーとして、穀物原料や食糧と競合しないリグノセルロース系バイオマスなどからのバイオエタノール生産技術の開発が急務となっている。担子菌は自然界にて木質資源のリサイクルに貢献している代表的な微生物であることから、バイオマスの糖化ならびにその前処理段階(脱リグニン等)への応用が期待される。本研究では、顕著なアルコール発酵性を有する担子菌に着目し、当該担子菌の物質変換能を活用したエタノール生産をはじめとするバイオリファイナリー実現に向けた新たな潜在能力の発掘と機能解明を目的とした。統合バイオプロセス(CBP)において、リグノセルロース資源を有効に活用するためには、ヘキソースとペントースを同時に利用可能な発酵菌が望ましい。今年度は、C5・C6糖を発酵可能な担子菌について詳細な特性解明を行った。その中で、白色腐朽菌Trametes versicolorと褐色腐朽菌陥Neolentinus lepideusにおいて、顕著なキシロース発酵性を見出した。T.versicolorはリグニン分解菌、N.lepideusはセルロース分解菌に分類され、担子菌としての性質はそれぞれ異なるものの、キシロースの発酵に対してはほぼ同様の傾向であった。特に、T.versicolorは代表的なキシロース発酵酵母Pichia pastrisに匹敵もしくはそれ以上のキシロースからのエタノール収率を示した。また、両菌とも単糖類、二糖類をはじめ、多糖類のデンプンや稲ワラなどからも良好なエタノール生産が可能で、未利用バイオマスを原料とした効率的なバイオエタノール生産への応用が期待される。
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