賦活領域を局在化するためにはアーチファイト対策が重要となり、そこで、従来対策が施されていない低レベルアーチファクトの解析を行った。その結果、fMRIで多用される画像処理ソフトウェアであるSPMの体動補正に起因して帯状にアーチファクトが発生することを発見し、その程度がタスク周期に同期した体動成分の大きさに相関することを明らかにした。通常、体動変位量が閾値(1mm程度)よりも大きな場合に、得られたfMRI撮像データを棄却する処理が行われるが、新たに導入したタスク周期に同期した体動成分の大きさにより棄却処理を行うことでアーチファクトを効果的に低減できることが判明した。 MRI拡散強調撮像のパラメータであるb値が低い値のとき、毛細血管のランダムな血流からの磁気共鳴信号が反映されるといわれており、そのことに着目し、エコー時間を広く変えて低b値で現れる磁気共鳴信号を解析した。その結果、その信号には毛細血管内血流以外のStarlingの原理による細胞間液からの寄与が示唆され、この信号を利用する撮像法により今までにない微小循環情報の画像化が期待される。 ラット前足に様々な電流値・周波数の電気刺激を行い、動物用7T MRI装置にてBOLD信号を測定するとともに、体性誘発電位も測定し、BOLD信号と神経活動との定量関係を詳細に解析した。誘発電位などで規定される神経活動と脳血行動態との関係は、従来、y切片を持つ線形モデルやpower lawモデルなどの数式表現でのみで議論されてきたが、刺激電流と刺激パルス幅の積(ISP : the intensity of the stimulation pulse)を導入することで、その値により、神経活動とBOLD信号の関係が線形領域、非線形領域に分類できることを明らかにした。特に、低ISPのとき背景脳波によるエネルギー消費が関与していることが示唆された。
|