研究課題
本研究計画の目的は、近年、新しい脳刺激手法として神経科学研究および臨床応用が行われているdDCSの作用機構を、複数の非侵襲的神経イメージング手法を組み合わせることによって解明しようとするものである。fMRIは、神経活動の変化に伴う脳血流や代謝の変化をMRIによって経時的に撮像してイメージングする手法である。本研究計画では、tDCS前後でのMRI T2*強調画像を撮影し、statistical parametric mappingを用いて変化を統計的に解析し、tDCSによる脳活動の変化を定量的に明らかにする(3T-MRI, Trio、現有設備)。全脳を覆う多チャンネル脳波(64チャンネル、Neuroscan system、現有設備)を用いて、大脳皮質の電気的活動を直接に反映する脳波律動の定量的スペクトル解析することで、fMRIとは異なった情報を高い時間分解能で得ることが可能である。本年度には、tDCSの各種パラメータを系統的に検討する基礎技術として、MRIスキャナー内で使用可能なtDCS電極と必要な週辺機器の開発とその検討を行った。スキャン中の変動磁場による誤作動を回避するための機器修正が必要であった。その他に、電極による画像の乱れが、電極直下の頭部ではわずかではあるが認められた。この点については、ソフトウェア上の操作のみで修正可能かどうかについて検討中である。また、脳磁図(Magnetoencephalography: MEG)でも同様の検討を行うため、非磁性体での刺激電極と電線を開発して、MEGシールド室のなかでのその作動確認を行った。その結果、tDCSによる刺激の施行中に同時のMEG記録は困難であるが、その前後での記録は安定して行うことが可能であった。また、tDCSと同様の脳可塑性を誘導する技術としてのTMSに関して、皮質-基底核ループへの影響を含めて検討した。
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