研究課題
平成23年度は、乳児における「声の知覚」に選択的な活動を示す大脳皮質領域の同定に関する研究を継続して、多チャンネルの近赤外光トポグラフィーを用いた脳機能計測を実施した。ボランティアでご協力いただく3ヶ月齢の乳児を募集し、研究の趣旨を乳児の保護者に説明した上で、同意書に記入いただいた方を対象に計測を行った。睡眠時と覚醒時の乳児に音声を提示しながら計測を行い、得られたデータについての解析を進めた。また、乳児における「子音の知覚」に関するデータの解析を平行して行い、運動前野における音声刺激の種類に依存した活動を見いだした。左右半球の間で活動パターンに違いがあることも明らかにした。この結果をまとめて、第34回日本神経科学大会において学会発表を行った。発達脳における音声言語処理に関しては、処理が優位に行われる半球の側性化についても検討する意義がある。成人では、言語の処理に関わるネットワークが主に左半球に認められるという傾向が報告されているが、発達の過程にある乳児にもそのような傾向が見られるのか否かが問題になるからである。音声情報を提示されている場合の機能的なネットワークの側性化に注目して、睡眠時の3ヵ月児から得られたデータを解析した。このデータセットでは、自発的な活動を反映する3分間分のデータを取得した後で、音声を20秒ごとに9回合計3分間提示しながら計測している。その後でもう一度音声を提示しないで3分間の計測をする時間を設けた。解析の結果から、音声を提示している間は前後方向の長距離にわたる機能的なネットワークが賦活されることが明らかになった。また、音声を提示する前後で脳活動の揺らぎに違いが生じて、ネットワークの現れ方が特に左半球で異なることが示された。これらの結果は、乳児期の言語機能の側性化について重要な知見であり、「Frontiers in Psychology」誌に発表した。
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Frontiers in Psychology
巻: 2 ページ: Article 93,1-14
doi:10.3389/fpsyg.2011.00093