研究概要 |
本研究の目的は,音のパターン(単語やメロディーの断片)認知や視覚認知(物体認知や空間認知),更に体性感覚認知をする際,部位間にどのような同期現象が生ずるのか,ということを振動子の位相の振る舞いから明らかすることである. まず,正常な脳磁界で比較的同期現象が起きやすいことで知られる脳磁界聴性定常応答において,刺激音に対する位相同期に確率共鳴現象が見られたことから,聴覚野における振動子の存在を明らかにした.このことは,聴性定常応答の発生機序の解明に繋がると考える. 視覚機能に関しては,迷路課題遂行中の前頭θ波(5-7Hz)に着目して,複素コヒーレンスを用いて脳領域間の機能的関連性について検討している.複素コヒーレンス法を用いることで,脳波計測で問題とされる体積伝導の影響を無視して機能的な関連性を検討することが可能とある。この手法を用いて前頭θ波出現と後頭部の関連を報告した.これにより脳波計測において,脳活動のより局所的な脳機能の関連が検討可能である. 体性感覚に関して,電気刺激の刺激周波数を変化させて,体性感覚誘発脳磁界反応(SI, SII)を検討した.その結果,刺激周波数により体性感覚野のSI, SIIの活動の違いが明らかになり,その活動の違いを電気回路モデルにより定量的に示した。この回路には共振回路が含まれることから,体性感覚においても同期現象が生じることが分かる. 以上の結果より,ヒトの認知機能に関して脳活動の同期現象が重要な役割を果たすことを示した.
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