本研究の目的は、脳における水分子の挙動を反映するNMR信号の特徴付け(characterization)を行うために、変調をかけた「動き検知用傾斜磁場(MPG)」を使った「拡散スペクトル・イメージング(DSI)」の方法論を開発し、またその精度を確認する事である。昨年度までに、Oscillating gradientシーケンスを用いて、生きたままラット頭部の撮像に成功した。小脳白質、小脳灰白質、視覚野と連合線維において、Oscillating gradientの25-133Hzを超えるレンジにおいて、mean diffusivity(MD)が有意に増加した。一方で、fractional anisotropy(FA)は、小脳白質においてのみ、Oscillating gradientの周波数の減少が観察された。本年度は、統計的処理に必要な十分なデータ収集の追加およびデータ解析を行い、組織の微細構造について定量的な解析を行い、拡散時間の短いものと長いものとで、異なった信号源があることが推定できた。この結果は、組織の水の動きにおいて、「制限された拡散仮説」と一致することが示唆され、これらの結果をまとめて論文を執筆し国際誌に投稿した。この研究は、見かけの拡散異方性の変化を提示する最初のOscillating gradientを用いた研究になり、DSIの基本的コンセプトの提示に成功した。併せて、派生的な研究として、拡散脳機能画像法において磁化率に異方性がある事を見出し、そのメカニズムに関する初期的な検討も実施した。
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