研究概要 |
計算機ネットワーク,自律分散ロボット,分子計算など,様々な領域に出現する巨大分散システムを統一的に議論するための分散計算モデルを設定し,その上に分散計算論を構築することを最終的な研究目的として,巨大性(エージェント数が巨大である),動的性(システム構成が変化する),ランダム性(システム変化は確定的ではない),低信頼性(システム要素は故障する),匿名性(システム要素は固有の識別子を持たない)という5つの観点から巨大分散システムを検討している.初年度は,同期,匿名性,記憶という切り口から,自律分散ロボットモデルを検討したが,22年度は低信頼性,匿名性,ランダム性という切り口から,特に乱歩にについて研究を行った.乱歩が分散計算に出現する理由は2つある.まず,(分散アルゴリズムに限らず)乱択アルゴリズムの動作は自然に乱歩として表現できる.つぎに,分散アルゴリズムでは,環境の概念が重要であり,通常はデーモン(あるいはスケジューラ)で表現されているが,このような環境を確率に基づいてモデル化することが適切である場合がしばしば現れる.このとき,ランダム化されたデーモンのもとでの分散アルゴリズムの動作は(アルゴリズムが確定的であっても)自然に乱歩として表現される.具体的には,以下に示す結果を含むいくつかの結果を得た.まず,乱歩の高速化という立場から,よく知られているMetropolis Walkについて,それらがある意味で最適であるという結果を得て,Theoretical Computer Science誌に発表した.また,故障からの自律的な復活を意味する自己安定アルゴリズムのランダム分散アルゴリズムによる実現可能性を乱歩(具体的にはマルコフ連鎖)によって特徴づけた.この結果は,現在,Distributed Computing誌に投稿中である.
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