研究概要 |
現在電子メールは友人間のコミュニケーションだけでなく、商取引などの重要な場面で利用されており、到達信頼性が重要な鍵となっている。そのような場面における最も典型的なトラブルは、送信者は送ったと主張し、受信者は受け取っていないと主張することである。これは、信頼された第三者(TTP)を介してやり取りを行えば解決できることであるが、計算コストなどの面でのデメリットもある。本研究は、TTPを利用しないシステムを、暗号技術を用いて設計しようというものである。初年度は主に現状の調査を行った。その結果として分かった(1)配達証明付き電子メールサービスの現状、(2)プロトコル開発研究の現状、について、以下に報告する。 (1)電子メールでの配達証明は商用化も進んでおり,その枠組はISO13888として標準化されている.海外で提供されているサービスの例としては,Goodmail SystemsのCertifiedEmail,DataMotionのSECURE MAILなどがある。また国内でも,NTTコミュニケーションズのV-Pack,IIJのセキュアMXサービスでのGDX Mailなどがあり,到達性を保証している.しかしいずれも,サービスプロバイダがTTPとして機能しており,プロバイダの信頼性にシステムは依存しでしまう. (2)Nenadic他や今本他は、TTPを用いない方法の場合の問題点を挙げ,TTPを利用した電子メールの配達証明の手法を提案している.しかし,Ray他は,TTPはシステムのボトルネックとなってしまうため,TTPに依存しない公平な秘密交換プロトコルが,よい研究対象となりうるだろうと述べている.Even他、岡本他、Barhreman他は,忘却通信、一方向性置換、ビットコミットメント,ゼロ知識証明などの暗号プロトコルを用いて、TTPを用いないプロトコルを提案している. また、今年度は(2)のうち岡本らのプロトコルを用いて、具体的にメール交換を実現する手法を提案し、国際会議SAINT 2009にて発表した。
|